代表的なスイーツであるドーナッツやケーキも、その甘さをひきたたせるために、塩を必ず使っています。それと同じように映像の場合も、影を作ってゆくことが作品のクオリティーを上げるのに必要不可欠な作業になります。

なので、ライティングの基本は光をあてることではなく影を作っていくことです。イメージ・ビデオなどグラビア・モデルを起用した作品の場合、敢えてフラットに蛍光管でライディングする場合もありますが、そういった画が続くと下らない作品ができあがります。綺麗に光をあてることの意味を良く理解しないと、食べた後にまったく記憶に残らない冷凍食品と同じようなものができあがります。

そういった意味では、東映の池広組や戦隊ものの照明技師の本田さんの照明技術は、一生記憶から消し去ることができないような味わい深い魅力があります。ある意味、どんなカメラマンが撮影しても本田さんのような照明技師にライティングしてもらえば綺麗な画が撮れちゃいます。

照明の技術が無いうちは、朝日や夕日のような鋭角な光をあてることによって簡単に影を作ることができます。また、技術的なものが身に付いてきたら、そのシーン毎の登場人物の心を表現したライトを作っていくことが大切です、オーソドックスな手法ですが、警察に追い詰められた犯人の顔の殆どに影がかかっているような手法はガンガン応用して取り入れていきましょう。また、強烈に悲しいシーンなのに、敢えて光に包まれたようなライティングなども意外と効果的です。