以外とプロの現場でも無視されるイマジナリー・ラインの大切さ

コレはプロの人たちも知らない(忘れている?)ことがあるけど基本中の基本なのでしっかりと身につけましょう。映画は鑑賞する方の大切な時間を2時間程完全に拘束してしまいます。また、制作者サイドも、その限られた時間内で人生の縮図をしっかりと表現しなければならないわけだから、全てのカット、カットつなぎ、セリフ、照明、音楽から役者の動きにいたるまで無駄の一切を省く必要があります。

もちろん、あえてカット尻の間を伸ばして鑑賞者の感情移入をより深いものにしたり、鑑賞者自身でしっかりと作品のテーマを考察できるような空白的時間などを入れていくのは演出として必要なことです。しかし、貴重な時間を2時間も拘束するわけですから、意図のないただ混乱を招くようなことはしない。コレは基本的な映像制作のマナーです。

某大手映画会社などが量産する商業的な作品の現場ですら、このイマジナリー・ラインが忘れられ、必要ないところで鑑賞者の作品への感情移入を妨げているものが多数発表されています。もちろん、あえて鑑賞者の意識を錯乱させたり、話の流れの急激な変化を鑑賞者に感覚的に伝える狙いがある時は別ですが、こういった演出上の狙いがある場合以外はイマジナリー・ラインを守りながら作品を制作していきます。

イマジナリーラインって何?

180-degree ruleイマジナリーラインは、鑑賞者の感情移入を深めるために必要な基本的な映像撮影テクニックです。当然、映画だけではなく映像を通して何かを観てくれている人に伝えたいTVドラマ、CM、その他ありとあらゆる映像作品の基本的要素です。

では上の図で見てみましょう。例えば
◇カット1(C1)男のカット
◇カット2(C2)女のカット
◇カット3(C3)二人の2ショット
◇カット4(C4)第三の男のカット
◇カット5(C5)どんでんのグループ・ショット

この場合カット5のどんでん返しはNGということです。男をC1から撮影したら、男と女を結ぶ線がイマジナリーラインということです。英語でこのことを「180 degree rule」ということからもわかるように、このイマジナリーラインを境に、最初にC1から撮影したのであれば、基本的には次のカットも180°ラインのC1側から撮影するということです。なので、上の図のように意味もなくC5に入ることは鑑賞者の意識を混乱させ、どことなく違和感を感じさせ、作品への感情移入を妨げるのでやらないというルールです。

イマジナリーライン破り「どんでん」が許されるケース

しかし、以下の場合は「どんでん返し」が許されます。
■あえて、鑑賞者の意識を混乱させる。
■神や霊などの目線的な、人間を超越した存在の見た目、もしくはそういった感覚を鑑賞者に与えたい場合。
■C5の前に空を舞うカラスや、木枯らしで舞い散る木の葉などのカットがは入る場合。
■芝居の流れを一気に変えたい時。
■人物が動いて、それと同時にカメラも移動して、どんでんにカメラが入った時。
■あえてイマジナリーラインを無視したカット割りをすることによって、鑑賞者に対して、登場人物達の感情は交わることなく、各々別の方向性を持って行動していくことを感覚的に認識させる場合。

下の画像は「芝居の流れを急に変えたいとき」の例です。
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ちょっと、面白くないカット割りではありますが、C6で急に凶器を持った男たちが表れ、場の流れを一気に変えたいような、こういった場面での「どんでん返し」はありです。