一つのシーンにも起承転結を
基本的にはワンシーンの中にも起承転結をつけて編集していきます。例えばアナタが世界の奇祭を巡る紀行作品の中のワンシーン、台湾の『イェン・スイ・フォン・パオ』という身体全身で無数のロケット花火を浴び、無病息災を願うお祭りの編集をしていたとします。
以下の手順で編集を進めていきましょう。
①起
何処でお祭りが行われているのか、具体的に視聴者に理解してもらわないと感情移入しにくい作品になります。なので、以下のようなカットを効果的に使用しましょう。
- お祭りの実景の前にその土地、町や村などの実景。
- 雷鳴と共に降り注ぐスコールや、それに雨に打たれる花など、季節感を感じられるようなカット。
- 風土を強烈に感じられるような音、または曲。
- 地図など。
後々のロケット花火を予感させるような真っ赤な夕日に染まった街や、また炎とは対照的な水面、人と自然との調和を願う祭りだったら自然のカットなど、自分が表現したいことを明確に画として伝えていきます。また作品のしょっぱなで、一気に視聴者の心を鷲掴みにするために、あえて群衆に向かって放たれる数十万発のロケット花火のカットから始めるのも『起』の的確な表現方法の1つです。
②承
本格的なお祭りのカットに入る前に、どのような祭りなのかが具体的に鑑賞者に伝わるように、伝統的なお祭りであればお供え物や準備風景などのカットを入れていきます。例えば民族衣装をまとう画の素材があったとします。その内の4カットを使用する場合、この4カットの中でもしっかりと起承転結をつけて編集していきます。
【指先につけられる民族衣装的つけ爪】⇒
【綺麗に結われた髮につけられる髪飾り】⇒
【嬉しそうに、そしてどこか誇らしげにそれを見つめている親の顔のヨリ】⇒
【恥じらいながらもニッコリと微笑む娘】
などです。
ここではっきりと伝えておきますが、よく作品全体としては一応、起承転結があるけど、それを構成するワンシーン・ワンシーンにおいては何の工夫もなく構図のいい画を適当に並べただけの作品がよくあります。ミュージック・ビデオではそれもありですが、その他の作品を制作する場合は、意味もなくカットを並べることは作品の質を下げることになるので絶対にやらないようにしましょう。
③転
そして、いよいよ料理でいうメイン・ディッシュ、お祭りのくだりです。今まで敢えて実景などのカットをつないできたのも、この転をより効果的に効かせるためです。
また今までの話と矛盾しますが、お肉から食べる人もいれば、お肉にかけられたソースを最初に味見する人もいたり、お肉の横に添えられたポテトから食べる人がいるのと同じように、見せ方は最終的には人それぞれです。今までの内容を理解したうえで、敢えて自分がもっともおいしいと感じられる順番に食べていけば・・・間違えました、カットをつなげていけばいいだけです。ただし意図的に起承転結を崩す場合の話で、意味もなく見栄えのいいカットが羅列しただけの作品を絶対に作ってはいけません。また、そもそもこの『転』は今までの話の流れが劇的に変化するくだりです。晴天が一気に雷豪雨に転じるが如く、またはその逆でいつまでも続くと思われた嵐がピタットやみ草原に色とりどりの蝶がゆったりと舞うかのような、鑑賞者を自分の世界にグイグイと引き込む仕掛けをしっかりと考えましょう。また画だけではなく、使用する音にも細心の注意をはらいましょう。
④結
シーンの終わりですが、ここで一番の工夫が必要です。主観のカットで、レンズにロケット花火がぶち込まれ保護レンズに刺さり→一瞬衝撃のため画面が黒みに変わって→次のコーナーでいきなりこのお祭りのアニミズム的な側面を象徴するような先史時代の巨神石のカットになってもいいし、黒が入って一瞬終わったかのようにみせかけながら、更なるお祭りの恍惚的な画が続くなども次のシーン次第ではありです。そして次のシーンの頭には前のシーンで心が浄化されたことを象徴するような、ガンジス河のほとりで静かに瞑想する画などもいい感じです。